睡眠と健康【こころの休憩室 Vol.28】

さて問題です。
下記の効能効果を持つ夢のような薬ってあると思いますか?

  • 寿命を延ばす
  • 若さを保てる
  • 記憶力と創造性を向上させる
  • がんや認知症を予防
  • 感染症(インフルエンザ・コロナ)の予防
  • 心臓発作、脳卒中、糖尿病の予防
  • 抑うつ感、不安感を消す
  • 肥満を防ぐ
  • 幸福感が高まる
  • 集中力や活力が増す

そうなのです、もうお分かりだと思いますが、心身の健康を保つ夢のような薬こそが「睡眠」なのです。

でも私たちは、他のことを優先し睡眠を犠牲にしてしまいます。
特に最近はスマホが普及し、SNSやネットで映画や漫画を見たり、ゲームをしたりして睡眠時間を削りがちになります。

1.日本人の睡眠時間

2018年OECDが調査した各国の平均睡眠時間では、日本が7時間22分でダントツの最下位で、
欧米諸国と比べると約1時間近く短時間となっています。

国内調査でも、今年1月厚生労働省発表の「令和2年度 健康実態調査結果の報告」では、
睡眠時間6時間以上7時間未満と答えた人が「32.8%」と一番多く
6時間未満と答えた人は「32.7%」という結果でした。

研究によれば、健康のためにも睡眠時間は8時間から9時間とる必要があるようです。
が、睡眠時間が8時間以上と答えた人は「15.2%」しかいないそうです。

私たち日本人は睡眠に関して無関心すぎるといえます。
では、睡眠不足による弊害にはいったいどのようなことがあるのでしょうか。

2.睡眠不足のリスク

睡眠不足の長期化は様々な疾病のリスクを高め、最悪は死に至ってしまいます。

例えば、高血圧や糖尿病のリスク、免疫力の低下によるがんや感染症、アレルギーのリスク、
アミロイド・ベーターが脳に増え蓄積することを促進するアルツハイマー型認知症のリスクが高まることも証明されています。

4時間以下の睡眠の人は7~9時間の人に比べ肥満率が73%も高くなり、
睡眠時間が6時間以内だとうつ病罹患率が高まることが証明されています。

また、睡眠不足は仕事や学習のパフォーマンス低下や事故のリスクを高めます。
アメリカの実験によると、6時間睡眠10日間を続けると
24時間起きていた人と同じレベルにまでパフォーマンスが低下するといいます。

同じくアメリカにおける2年間にわたって7000人以上のドライバーを対象にした調査では、
睡眠時間が5時間未満だと8時間に比べ自動車事故を起こす危険は3倍
さらに睡眠時間が4時間以下になると11.5倍になるそうです。

加えて、新しく学習したことをその日に眠らないと、記憶を刻み付けるチャンスを失うといいます。
そこで、睡眠と学習(記憶)の関係について少し説明します。

3.レム睡眠とノンレム睡眠

私たちが寝ているとき、一定パターンで「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が相互に繰り返されています。

「レム睡眠」とは、その最中に眼球が激しく動くことから「rapid eye movement(素早い眼球の動き)」の略でレム睡眠と呼びます。
そして、もう一方の睡眠を脳が完全に休んで眼球も動かないことから「non(非)」を付けて「ノンレム睡眠」と呼びます。

「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」は90分間隔で相互に入れ替わります。

①    レム睡眠の役割

「レム睡眠」の役割は、脳内にある古い感情や記憶を思い返し、新しい情報と統合することです。
そうすることで、頭の整理ができ、ひらめきや問題解決につなげています。

例えば、なかなか解けなかった問題が、朝起きると解くことができたことはありませんか。

「レム睡眠」時には脳は起きていて、私たちが夢を見るのは「レム睡眠」中がほとんどのようです。

したがって「レム睡眠」の時間が長くなる明け方の方が一般的に夢を多く見ることになります。
しかし体は完全にマヒした状態になります。

「金縛り」の話を聞いたことがあると思いますが、
まさに脳が起きている状態で体が完全にマヒした状態で起こる現象とも考えられます。

なぜ、レム睡眠時に体が完全にマヒするのでしょうか。
それは、頭の中で夢を見た際に、夢に合わせて体が勝手に動いたりして反応しないためといわれています。

②    ノンレム睡眠の役割

「ノンレム睡眠」時には全ての外界の刺激は入らなくなるので非常にリラックスした状態ともいえます。

「ノンレム睡眠」の役割は、成長ホルモンがたっぷり出ることで疲労回復などを促します。
体と頭の疲れをとる時間ともいえます。

また、重要な役割として短期記憶(新しい記憶)を長期記憶する場所に移動させる役割があります。

そのしくみは、新しい記憶はまず脳にある「海馬」という場所にためられます。
ただしこの「海馬」はUSBメモリーのようなもので容量が決まっています。

そのため、長期に保存できる大容量のハードディスクに移動させる必要があるため、
脳のてっぺん近くにある「大脳皮質」に移動させます。
その移動によって、前日の記憶が定着し新しい記憶を入れる空間をつくることができるのです。

したがって、睡眠時間が短いとUSBメモリーの「海馬」がクリアされずに、新しい情報が入らなくなります。

このように、私たちは健康のためにも学習効果を高めるためにも、良く寝ることが大切です。

企業の成長にも社員が健康で、各個人の能力を十分に発揮することが重要ですので、
社員の睡眠時間確保への配慮も必要になるでしょう。

※近年の睡眠に関する科学的な研究によって多くのことが解明されてきましたが、
 まだまだ未解明の部分も多く、今後の研究成果が楽しみな分野でもあります。
 また新たな知見が出次第ご紹介したいと思います。


  • 参考文献
    • 「睡眠こそ最強の解決策である」SBクリエイティブ
    • 「睡眠の科学」講談社
    • 一般財団法人日本栄養睡眠協会 提供資料

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