サイレントキラー・糖尿病【こころの休憩室 vol.48】

こんにちは。
働く皆様の心身の健康をサポートする
「えがおパートナーズ」です。

今月は、大学病院にお勤めになりながら
複数の企業の産業医をしている池田迅先生に
糖尿病についてお話をいただきました。


糖尿病は、食生活の変化や日本人特有の理由などで、
近年患者さんの数が大幅に増えています。

また、糖尿病は、
気付かないうちに体にダメージを与え、
さまざまな合併症を引き起こして、生活の質を著しく低下させる、
サイレントキラーとも呼ばれている怖い病気ですので、
是非どのような病気なのか知っておいて下さい。

糖尿病とは

糖尿病を簡単に説明すると、
血液中の糖の値、血糖値が持続的に高くなり、
それによってさまざまな合併症を引き起こす病気です。

血糖値は、主に飲食によって高くなります。
そして高くなると、インスリンという物質が膵臓から分泌され、
そのインスリンが余った糖分を
細胞内に取り込むことで、血糖値が下がります。

通常は特に意識しなくても、
血糖値が一定の範囲内におさまるように、
勝手にインスリンの分泌は調整されています。

人の体は非常によく出来ていますが、その分泌が悪くなったり、
インスリンの力が上手く発揮出来なくなったりすると、
血糖値を自力で下げることができなくなり、
血糖値が高い状態が続くことを糖尿病と呼びます。

日本人は欧米人に比べてこのインスリンを分泌する力が
もともと弱いと言われています。
さらに、加齢によって
分泌する力が落ちるとも言われています。

ですので、今は若くて糖尿病と無縁と思っていても、
いつ糖尿病予備軍となるか分かりません。

糖尿病の症状

では、実際に血糖値が高くなると、
具体的にどうなるか、どのような症状が出るか、
を説明していきます。

まず、え? と思われるかもしれませんが、
血糖値が高いというだけでは、特に大きな症状は現れません。

危険信号としては、
口渇・多飲・多尿と言われる3つのキーワードです。

血糖値が高い状態が続くと、尿に糖分が漏れ出し、
それに伴い尿の回数・尿量が増えます。これが多尿です。

そうすると、喉が乾く様になり(口渇)、
たくさん飲み物を欲する状態(多飲)になります。

喉が渇いた時に、普段から、
甘い砂糖入りの飲料水を飲む習慣があると、
血糖値が高い状態に追い討ちをかける様に
糖分を体に流し込むことになります。

すると、さらに血糖値が上がり、多尿状態となり、
喉の渇きはおさまらず、さらに飲み物を欲するという
悪循環に陥ります。

そうなると、インスリンの働きが追いつかなくなり、
体がどんどんと酸性に傾き始め、意識状態が悪くなり、
昏睡状態から、最悪死亡に至るケースもあります。

ただ、このような症状が自分で自覚する程度に
必ず出るわけではありません。
気付かないくらいの軽微なもので、
よくよく聞かれると確かに
そういった症状があるかもしれない
といったこともあります。

しかし、症状が軽い、気付かないといっても、
血糖値が高いと体の中の細かい血管がダメージを受けます。
そのダメージが知らず知らずに蓄積し、悪化していき、
気付いた時には後戻り出来ない状態になっていることがあります。
それが、サイレントキラーと言われる理由です。

糖尿病の合併症

3大合併症として、神経障害、網膜症、腎症があります。
神経・目・腎臓の頭文字を取り、「しめじ」と呼ばれますが、
血糖値が高い状態が続くことで、それらの合併症を発症し、
それが日常生活の質を著しく低下させます。

神経障害では、手足の先の痺れや感覚障害、
立ちくらみや便秘や排尿障害が起こります。

網膜症では、視力低下や視野が欠けたり、
最悪失明となったりします。
失明の原因の第2位が糖尿病によるものです。

また、腎症では、腎臓の機能が低下し、
最終的には透析が必要となります。
透析の原因の第1位は糖尿病によるものです。

それら以外にも、
怪我をした後に傷の治りが悪く、感染症になりやすかったり、
血管の動脈硬化によって、心筋梗塞や脳梗塞になりやすかったり、
さまざまな病気を発症するリスクが
大幅に上昇してしまいます。

治療法

1型糖尿病と言われる、インスリンがほとんど
自力で出せない場合を除き、
早期にしっかりと病気と向き合い、
生活習慣改善の努力や治療を積極的に受けることで、
糖尿病のない人と同じような生活を送っていくことが可能です。

ですので、もし、健康診断などで、
糖尿病や糖尿病の疑いと言われた場合には、
積極的に医療機関を受診して、早期にしっかりと
治療を受けるようにして下さい。

糖尿病治療も日進月歩で進化しています。
数年で比べても、治療の選択肢も増え、
治療効果が高い薬も登場しています。

1番の問題は、今は症状がないからと言って、
医療機関への受診を先延ばしにしたり、
面倒くさがって向き合わなかったりすることです。

病気はある程度進行してしまうと、
後戻り出来ない状態になってしまいます。

あの時にきちんと治療していたら……と後悔しても、
残酷ですがあの時に戻ることは決して出来ません。

糖尿病の患者さんをたくさん治療して来て、
初期に病気と向き合うと
治療しなくてよくなることもありますし、
少量の薬でいいこともあります。

一方で、治療を行わないと、
先程述べた合併症によって、日常生活に支障が出たり、
糖尿病以外の治療で薬が増えたりすることになってしまいます。

大切なことは、糖尿病は症状だけで
決して判断してはいけないと言うことです。

症状がなくとも、知らず知らずに
状態が悪化している可能性がありますので、
是非医療機関への定期的な受診、治療継続をお願いします。

今日是非覚えておいてもらいたいことを最後にまとめます。

  • 血糖を下げる物質は、インスリンしかありません。
  • 糖尿病の初期症状、口渇・多飲・多尿があれば、
    医療機関受診をしましょう。
  • 過剰な砂糖入り清涼飲料水の摂取はなるべく避けましょう。
  • 糖尿病は、知らず知らずに体を蝕むサイレントキラーです。
    症状だけで、決して判断しないようにしましょう。

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