現代社会とストレス反応【こころの休憩室 vol.50】

こんにちは。働く皆様の心身の健康をサポートする、えがおパートナーズです。

先月は、ストレスの原因になるできごとに直面したとき、
私たちの頭や体で何が起こるかご説明しました。
脳でストレスが評価されてから、
体はストレスに対処するという内容でした。

そこで今回は、前回予告した通り
「ストレスの反応が、ストレスの対処に役立たない」
ケースについて考えてみます。

人前での発表を控えているとき、
心臓がドキドキし、手が震え出したご経験をされた方も
多いのではないでしょうか。

この反応もストレスが原因で起きているのですが、
発表をやり遂げるにあたっては、逆に失敗の原因にもなってしまいます。
なぜこんなことが起こるのでしょうか。

現代社会はストレス反応を活用しづらい

時代や社会の変化とともに
「ストレスの原因」は大きく変わりました。

昔は、ストレスの原因（生きるか死ぬか）には
「戦う」か「逃げる」かによって対処できました。

ストレス反応に力を出す準備をしておけば、
素早く行動を起こすことができ、
血が流れにくくなれば怪我をしたときの出血量が少なくなります。
ストレス反応は大体の場合役立っていたのです。

現代の社会においても、人間のストレスに対処する仕組みは
昔とほとんど変わっていませんので、
ストレス要因に出くわした体は
「戦う」か「逃げる」準備をします。

しかし、それを役立てることは難しくなりました。
人前で発表するとき、筋力を発揮する準備や、
出血への備えが始まって役に立つことはほとんどありません。

更に、社会が複雑になった現代では、
ストレスの原因も多様になり、
人間は絶え間ないストレスにさらされています。

やがては疲労困憊し、心身を壊してしまうことも少なくないのです。

現代社会でのストレス

ストレス反応に耐えているだけでは、やがて心身に悪い影響が出ます。
かといって、ストレスの原因そのものを
いつでも簡単に取り除けるわけではありません。

ではストレス反応が起きたとき、
一体どうすればいいのでしょうか。

考えられる方針は2種類あります。

素早く落ち着きを取り戻す

1つ目は、起きてしまったストレス反応を
素早く「落ち着かせる」ことです。

ストレス反応があらわれても、
すぐにいつもの状態に戻れれば、
悪影響も少なくなります。

素早く冷静になるコツは、○分以内に何が起こるかを考えることです。
具体的には、恐れていることが「5分以内に現実になるか？」と自問自答してみてください。

2日後に控えた発表の本番が心配で仕方ないときを例に考えてみます。

これから5分のうちに、何が起こるでしょうか？

発表まであと2日ある以上「本番で失敗する」という不安が
すぐに現実になることはありません。
猶予を確かめるだけでも、自然と安心できるでしょう。

ストレス反応を利用する

2つ目は、ストレス反応を「利用する」ことです。

例えば、緊張で心臓がドキドキし、手が震えるような場面では
「ある意味ワクワクしているんだ」
「これを乗り越えれば自分は成長できる」と、
前向きにイメージを変えてみるのはどうでしょうか。

今月の冒頭で
「心臓がドキドキしたり、
手が震えたりすることが失敗の原因になる」
とお話ししました。

こうした不安な連想を振り払えれば、
ストレス反応は悪いものではなくなります。
そこに自分のポジティブな気持ちが合わされば、
前に進むエネルギーになってくれるのです。

現代を生きる私たちは、そう簡単に
ストレスの要因をなくすことはできません。
反応が起きることを当たり前に受け止めて、
よりよい経験に変えてみましょう。

まとめ

• 現代ではストレスの原因だけでなく、
  ストレスで起きる反応への対処が必要です。
  • ストレスに対処する仕組みは、
    現代の社会ではうまく働かないことがあります。
    「戦う」か「逃げる」で対処できる問題が少ないためです。
  • ストレスを長期間感じ続けると、
    心身ともに疲れ果てて、不調が引き起こされます。
• ストレス反応が起きたとき、耐える以外にもできることがあります。
  • 「5分以内に不安が現実になるか？」を考えると、
    素早く落ち着きを取り戻せます。
  • 心臓のドキドキを「ワクワクしてきた！」と
    ポジティブに捉え、ストレス反応を活用します。

• 参考文献
  • ゆうきゆう, 『眠れなくなるほど面白い 図解 ストレスの話』, 日本文芸社, 2021年
  • 読書猿, 『問題解決大全』, フォレスト出版, 2017年