ストレスチェックの実施にあたっては、ストレスチェック制度について知ることが重要です。
制度を正しく理解することで、ストレスチェックによって得られた情報をよりよく活用することができます。
ストレスチェック制度は、2014年の労働安全衛生法一部改正に伴って創設された制度です。
仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者が多いことから、国は「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を公表し、事業場におけるメンタルヘルスケアの実施を促進してきました。
しかし、その後も仕事によるストレスが原因で精神障害を発病し、労災認定される労働者の増加傾向は止まりませんでした。
ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することがますます重要になるなかで創設されたのです。
ストレスチェック制度の目的
事業場における事業者による労働者のメンタルヘルスケアは、3つの段階に分けられます。
このうち、ストレスチェック制度の主な目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)にあたります。
- 一次予防
- 労働者自身のストレスへの気付き・対処の支援・職場環境の改善を通じ、メンタルヘルス不調を未然に防止する
- 二次予防
- メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う
- 三次予防
- メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰を支援する
事業者はメンタルヘルス指針に基づいて、二次予防・三次予防も含めた総合的な取組のなかに、ストレスチェック制度を位置付けるべきとされています。
ストレスチェックの実施対象
実施対象となる事業者
ストレスチェックの受検対象となるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業者です。
パートタイム労働者や派遣労働者も含めて、事業場にいる労働者の数を数え、50人以上であれば「常時50人以上の労働者を使用している」ことになります。
実施対象となる従業員
ストレスチェックの受検対象となるのは、常時雇用する労働者です。
常時雇用する労働者とは、労働安全衛生規則で定められた下記の条件に当てはまる人をいいます。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者
もしくは期間の定めのある労働契約により使用され、当該契約の契約期間が1年以上である者
契約更新により1年以上使用されることが予定されている者・1年以上引き続き使用されている者を含みます。 - 1週間の労働時間数が、同じ事業場で同じ種類の業務をおこなう通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者
なお、2つ目の条件において1週間の労働時間数が2分の1以上の者で、なおかつ1つ目の条件にある労働契約の状況を満たしている労働者についても、ストレスチェックを実施することが望まれます。
ストレスチェックの実施時期に休職している労働者については、実施しなくても差し支えありません。
派遣労働者の取り扱いについて
派遣労働者に対するストレスチェック及び面接指導は、派遣元事業者が実施することとされています。
一方、派遣先事業者が派遣労働者も含めた集団ごとの集計・分析を行うためには、派遣先事業者が派遣労働者にストレスチェックを実施する必要があります。
このため、派遣労働者は、法に基づく義務として派遣元が実施するストレスチェックと、集団ごとの集計・分析のために派遣先が実施するストレスチェックの両方を受けることになります。
ストレスチェックの役割分担
業務の内容に応じた役割分担のもと、担当者を決定します。
役割分担は、労働者の健康情報を取り扱うかどうかによって大きく二つに分かれます。
ストレスチェック制度全体の管理・方針を決定する者
労働者の健康情報を取扱わず、制度全体の管理や方針決定にかかわる役割を持つ者は、以下の通りです。
- 事業者
- ストレスチェック制度の実施責任をもち、方針を決定する者です。
- ストレスチェック制度担当者
- ストレスチェック制度の実施計画の策定、実施の管理を行う担当者です。
- 衛生管理者や、事業場内のメンタルヘルス管理担当者が担当します。
- ストレスチェック結果等の個人情報を取り扱わないため、人事権を持つ者を指名することもできます。
- ストレスチェック制度の実施計画の策定、実施の管理を行う担当者です。
ストレスチェック実施の事務を行う者
ストレスチェック実施の事務を行う役割を持つ者に、実施者と実施事務従事者がいます。
人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、実施者と実施事務従事者に従事できません。
労働者の健康情報を取扱う事務で得た情報が、人事上の不利益な取扱いに利用されることがないようにするためです。
- 実施者
- ストレスチェックテストを実施する医師、保健師等のことです。
- ストレスチェック実施に関し、下記について事業者へ専門的な見地から意見を述べます。
- ストレスチェックに使用する調査票の選定
- 高ストレス者の選定方法と基準の決定
- ストレスチェック受検結果に基づいて、個人に医師による面接指導を受けさせる必要があるかを判断します。
- 実施事務従事者
- 実施者の指示により、実施者の補助業務を行う者のことです。
- 記入した調査票の回収、内容の確認、データ入力、評価点数の算出等、ストレスチェック結果を出力するまでの労働者の健康情報を取扱います。
- ストレスチェック結果結果を労働者に通知するまでの健康情報を取扱う事務を行い、結果を労働者に通知します。
- 面接指導を受ける必要がある者に、面接指導の申出勧奨を行います。
- ストレスチェック結果を集団ごとの集計・分析にかけます。
ストレスチェック実施規程の決定と周知
一人でも多くの労働者が、安心してストレスチェックを受検できるようにしなければなりません。
そのために、ストレスチェックがどのような形で実施され、どのような結果が通知されるのかについて教育啓発します。
そこで、衛生委員会等の場でストレスチェック実施規程を定め、あらかじめ労働者にその内容を周知します。
ストレスチェック実施規程で定めるべき事項は以下の通りです。
具体的なストレスチェック実施規程の例は、厚生労働省Webサイトにございます。
あくまで例ですので、実際に規程を作成する際には、社内での検討を経て、事業場の実態に合った規程を作成しましょう。
ストレスチェックの実施
ストレスチェック実施にあたって担当者が行うべき業務や、集団ごとの集計・分析につきましては、別のページをご覧ください。
ストレスチェックの実施
えがおパートナーズのストレスチェックサービスを利用した場合の流れと、ご担当者様が必要な業務をご紹介しています。
集団ごとの集計・分析
ストレスチェック実施後に、結果を集団ごとの集計・分析する場合の方法についてご説明しています。
ストレスチェックに関する情報の保存
ストレスチェックに関する一部の情報は、5年間の保存が義務付けられています。
個人情報として扱われるものが含まれますので、情報の管理方法については注意を払う必要があります。
事業者が保管する情報
労働者の同意を得て事業者に提供された下記の情報は、事業者が保存します。
- ストレスチェック結果の事業者への情報提供の同意に係る書面か電磁的記録
- 医師による面接指導にかかわる情報
- 面接指導を受けることを希望する申出の書面か電磁的記録
- ストレスチェック結果の写し
- 面接指導を実施した医師から提供された、面接指導結果の記録
- 集団ごとの集計・分析結果
実施者・実施事務従事者が保管する情報
事業者への提供について労働者の同意を得ていない下記の情報は、実施者か実施事務従事者が保存します。
- ストレスチェック結果
- 個人ごとの検査結果を数値、図表等で示したもの
- 調査票の各項目の点数一覧や、個人のストレスプロフィールそのものでも差支えません。
- 高ストレスに該当するかどうかを示した評価結果
- 面接指導の対象者か否かの判定結果
- 個人ごとの検査結果を数値、図表等で示したもの
「実施者や実施事務従事者が管理する」ということは、その立場にある個人が保管場所を確保し、管理することを意味しません。
保存・管理方法を衛生委員会等で調査審議の上、事業者が決定し、それに基づいて保管することもできます。
ただし、個人のストレスチェック結果が事業者を含めた第三者に見られないよう、厳密なセキュリティ管理が必要です。
ストレスチェック業務の外部委託
ストレスチェック制度の一部または全部の業務は、外部機関に委託することが可能であると指針に示されています。
外部委託の際には、委託先機関が適切にストレスチェックや面接指導を実施できるか、情報管理が適切になされるかどうかを確認しましょう。
厚生労働省によるチェックリストの例もございますので、必要に応じて内容を変えながらご活用ください。
参考資料
制度のより詳細な内容については、下記資料をご覧ください。