人の話をしっかりと聴く【こころの休憩室 vol.11】

前回は、職場のコミュニケーションにおいて、話し手がいかに「わかりやすく話す」ことが大事かに触れてきました。
話し手が、分かりやすく話すことにより、話を聴く人の頭の中に「あ、なるほど!そういうことですね」とイメージがわけば成功です。
そのための手法として、「なに、なぜ、どのように、たとえば」を実践していただけましたでしょうか。 
今回は、双方向のコミュニケーションのもう一方の「人の話をしっかりと聴く」ことを、考えていきたいと思います。 

話の上手な人は、人の話を聴くことも上手と言われています。
話したり、聴いたり、上手くバランスを取ってコミュニケーションを取ることで、
職場のコミュニケーションが活性化し、意思疎通の良い職場づくりに役立ちます。

さて、「皆さまは、話をすることと、聴くこと、どちらが得意ですか?」と尋ねられたら、何と答えますか?
「私はやっぱり、自分の話を聴いてもらいたいな」と答える方が多いのではないでしょうか。
どっちがどうと一概には言えませんが、一般的に「私たちは、人の話を聴くよりも、自分の話を聴いてもらいたい」思いが強いと言われています。 

例えば、
「上司から一方的に叱られて、本当は言いたいことがあったのに聴いてもらえなかった」
「人が話している途中で、最後まで話を聴かずに、話の腰を折って自分の話にしてしまった」
「プライベートの食事会での会話をいつも独り占め」……など、
話を聴くよりは、話をする方が得意という人たちが、たくさんいらっしゃるのではないかと思います。
これでは、コミュニケーションは双方向ではなく、一方通行になってしまいます。 

そこで、職場のコミュニケーション活性化のために、「聴くスキル」を磨いていきたいと思います。

まず、「積極的傾聴」の基本を学んでいきましょう。
「積極的傾聴(Active Listening)」は、米国の心理学者でカウンセリングの専門家であるカール・ロジャーズによって提唱されました。
ロジャーズは、自らがカウンセリングを行った多くの事例を分析し、カウンセリングが有効であった事例に共通していた、聴く側の3要素として「共感的理解」「無条件の肯定的関心」「自己一致」をあげ、人間尊重の態度に基づくカウンセリングを提唱しました。
そこで、カウンセリングの3要素を、ひとつずつ確認していきましょう。 


1. 共感的理解

相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら、まるで、自分のことのように聴いていくことです。

例えば、部下や同僚から「仕事を辞めたい」と相談されたら、「そうなんだ。辞めたいと思っているんだね」と相槌をうちながら聴きましょう。
くれぐれも、唐突に「急に辞めるなんて言い出すのは良くないよ」と責めたり、
「なぜ、辞めたいの?何かきっかけがあったの?」と詮索したりしないようにします。 

2. 無条件の肯定的関心

相手の話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずにそのまま聴くことです。相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴いていきます。
相手の話の内容 に何か課題があったとしても、まずは、「○○さんは、~~~と思っているのですね」と否定せずにそのまま、聴いていきます。 

3. 自己一致

聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度であることが大事です。
話が分かりにくい時は分 かりにくいことを伝え、真意を確認します。分からないことをそのままにしておくことは、自己一致に反することになります。
聴く側も自分の気持ちを大切にし、もし相手の話の内容にわからないところがあれば、そのままにせず聴きなおして内容を確かめます。
例えば「今のお話で、この点が分からなかったのですが、もう一度話してもらっていいですか?」など、躊躇せずに質問します。 


ここまでは、傾聴する際(カウンセリング)の3要素を押さえてきました。
次は、実際に話しを聴く際 に、どのような態度で聴いていけば良いかを考えてみます。
相手を尊重し、相手のために「心に耳を傾けて」聴くための6つのやり方です。 

1つ目は“アイコンタクト”。
凝視せず、柔らかく穏やかな視線を送り、話しやすい雰囲気をつくりましょう。

2つ目は“相槌”。相槌には、共感、同意、促進、転換などの様々な役割があります。
例えば、「はい」「ああ、そうなのですね」「おっしゃるとおりです」「ところで」など、
話しの内容に応じて、積極的に相槌を入れましょう。

3つ目は“うなづく”。うなづいて話しを聴くことで、あなたのお話しをちゃんと聴いていますというメッセージを送ります。
深めのうなづき、浅めのうなづきなど、話しの状況に合わせてうなづきます。目安として、相手の話しの6割ぐらいにうなづいて聴きましょう。

4つ目は“ジェスチャー“。手振り身振りを入れることで、話のインパクトがより明確に相手に伝わります。
また、相手と同様な仕草をするミラーリング効果も試してみましょう。同じ動きをすることで、好感度が高まるとされています。
例えば、相手が頬杖をついたら、あなたも、顔に手を当ててみる、お茶を飲んだらお茶を飲んでみるなど、相手に近い動きをします。

5つ目は“態度”。目に見える態度はストレートに相手に伝わります。 
腕や脚を組んだりすると威圧感が伝わります。キョロキョロ落ち着かない態度や、何かをしながら、話を聴くのはNGです。話し手は話しをする気がなくなります。落ち着いて腰を据えて聴きましょう。 

6つ目は“質問”。
話し手は、質問に答える中で、自分の気持ちや考えを話し、話しながら気付いたり、気持ちの整理が進んだりします。そこで、話し手の利益になるような質問を工夫します。
「難しい仕事を引き受けた時に、どのような気持ちがしましたか」「その仕事に実際に取り組む時に工夫したことは、ありますか」「やり終わった時に、どのような気持ちになりましたか」など、ひとつのことでも、深めて質問をしてみましょう。 

以上の通り今回は、人の話を積極的に聴く「傾聴」について考えてきました。
話すと聴くの双方向のコミュニケーションを活性化して、意思疎通の良い、働きやすい職場づくりにお役立てください。 

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