仕事を探している友人に自分の会社を勧められるか?【こころの休憩室 vol.20】

人材の採用と人材の定着は企業にとっては大きな問題ですが、2020年に入って状況は大きく変化し、アフター(With)コロナではこれまでの人材採用のあり方に再考を求められることもありそうです。

これまでの採用では、Web求人経由、人材紹介会社経由、就職セミナー経由などの採用(就職・転職)活動が主流でしたが、企業の採用活動の手段として、米国では社員からの紹介による採用活動である「リファラル採用」が主流になっていて、日本においても有名ベンチャー企業や、同じ業界内でも仕事内容や待遇に大きな差がない業界(医療、介護、飲食店、製薬など)では「リファラル採用」による転職が増えています。

しかし反面、現状ではそれら業界は転職しやすい業界ともいえるので、入社後の定着率は大きな課題と言えます。

「リファラル採用」のメリットは、社員の知人・友人なので、ある程度人柄や能力の質が担保されていることと、コスト(紹介料、求人広告料)や採用の労力を大きく削減できるなどメリットがあるため、企業は「リファラル採用」に力をいれています。

「リファラル採用」を考えるとき、会社側は「どのようにしたら積極的に自社の社員に友人を紹介してもらえるだろうか?」と考え、部下に直接指示を出したり、金銭的・評価などのインセンティブを設けることも増えています。
しかし、それでは対症療法でしかなく、根本的な解決にはなりません。

やはり、会社側も社員側も同じ目線にたち「はたして、仕事を探している友人に自分の会社を勧められるのか?」と、客観的に現実を考えることはとても重要で、単に採用の問題だけではなく離職者を減らすヒントにもつながり、共にメリットがありそうです。

弊社が実施している社員意識調査の中に「仕事を探している友人に自分の会社を勧められますか?」という質問項目があります。
この問いへの回答には大きく分けて3つのパターンがあります。

1つ目のパターンは、社員は今の会社で働いていることにある程度満足していて、今後もこの会社で働き続けたいと考えているので、仕事を探している友人がいれば、選択肢として自分の会社を勧めたいと思っている人です。
このような社員が多い会社は、たぶん活気があり、定着率も高く、社員のモチベーションも高い会社と容易に想像できます。理想的な会社といえます。

2つ目のパターンは、現職の会社や仕事に多かれ少なかれ不満を持っていて、将来、今の会社を退職することも考えているので、当然、その社員は友人を自分の会社を勧めることはほぼないでしょう。
会社(人間関係含む)に問題がある場合もありますが、最近の不調を考えると、少しばかりの不満で簡単に転職する(転職できる)現在の転職事情も根本にあります。

この上記2つのパターンはとても分かりやすいですが、3つ目のパターンは一見矛盾しているようで少し複雑です。
今の会社で働いていることにある程度満足していて、今後も働き続けたいと思っているが、友人には自分の会社を勧めようとは思わないパターンです。

その理由として、

  • 他人とは考え方や価値観が違うので、友人にとって良い会社とは限らないから
  • 友人にも会社にも余計な責任を負いたくないから
  • 自分の会社では能力が高すぎる。又は逆に能力が足りないから
  • 面倒なので「会社に満足している」と回答したが、正直いって考えたことがないのでわからないから
  • 今はある程度妥協して折り合いをつけているが、友人に勧めるほど満足しているわけではない。
    当然不満もあるので、将来ずっと今の会社で働き続けるかどうかは分からないから

などがあります。

これら、一見矛盾しているように思えるこのパターンには社員の重要な本音が隠されているので、このまま放置するのは勿体ないことかもしれません。

「自分の会社は仕事を探している友達にお勧めできる会社ですか?」の問いに始まり、単に「はい・いいえ」と表面的に終わるのではなく、

「具体的に会社のどこと、どこに満足しているのか?」
「具体的にどこと、どこが不満なのか?」
「どこを直せばより満足するのか?」
「そのためには自分に何ができるのか?」

と、さらに深堀して考えることが大切です。

そして、最後のまとめとして

「自分で解決できる問題か」
「自分で解決できない問題か」
「本質的で変わりようのない問題か」
「一時的で今は我慢すべき問題か」

などに分けて書き出してみることで、得体のしれないイメージや感情で捉えていた問題や不満が整理されます。

モヤモヤした問題や不満はストレスの原因になりますが、自分自身で整理することでストレスの解消にもなり、さらに後悔するような早まった転職も回避することができます。

企業側も同様で、「自分の会社は仕事を探している友達にお勧めできる会社ですか?」の問いを自らも考え社員と同じ目線に立つことでの、社員の採用や定着へのヒントを得ることができるかもしれません。

単純でありふれた質問かもしれませんが、一度真剣に「仕事を探している友人に自分の会社を勧められますか?」の問いについて深く考えてみても無駄にはならないと思います。

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