先入観を乗り越える【こころの休憩室 vol.60】

こんにちは。
皆様の心身の健康づくりをサポートする
「えがおパートナーズ」です。

新しい年が始まりましたが、職場の同僚を見渡してみると
「あの人の〇〇なところは嫌いだなぁ」
「〇〇さんの悪いところは……」など、
マイナス面の先入観をもっている同僚がいることが少なくありません。

そんなちょっとした先入観は、
自分自身のメンタルにとっても、
職場の同僚との人間関係にとっても
良くない影響を与えることがあります。

先入観がどんな問題を起こすのか、
どうやってそれを乗り越えていけばいいのかを、
今回は一緒に考えてみましょう。

自分の先入観が相手を変える:
予言の自己成就

自分の先入観が、相手をその通りの人物に変えてしまうことがあります。
なぜそうなってしまうのかを、
あなたの身の回りに短気な同僚がいるとして考えてみましょう。

その同僚は、ちょっとしたことですぐ不機嫌になります。
仕事に差し支えはありませんが、空気がピリピリするのがイヤで、
あなたはその同僚とあまり話したくありません。
できるだけ手短に用件を伝えて、話を切り上げてしまいがちです。

するとどうなるでしょうか?
最低限のことしか話さないあなたの態度に、
短気な同僚は腹が立ってきた様子です。
あなたは「やっぱりこの人は苦手だ……」という思いを
ますます強めてしまうでしょう。

「この人は怒りっぽいから」と気をつかうことで、
かえって相手を怒らせてしまいました。
これを予言の自己成就といいます。
先入観をもったままでいると、
穏やかに仕事をするための心がけが逆効果になることもあるのです。

医療従事者も逃れられない
「スティグマ:烙印」

個々人の性格だけでなく、ある性別や年齢、病気といった
特徴に対する先入観もあります。
中でも特徴と結びついた悪いイメージは
「スティグマ」と呼ばれます。
日本語では「烙印」、罪を犯した人につける
消えない目印のことです。

スティグマ抜きで人を見ることは難しいものです。
例えば、日々たくさんの患者を診察している医師でも、
糖尿病の患者は怠けていると考えてしまうことがあります。
医師のピーター・アティアもその一人でした。

アティア医師はある日、
すぐに脚を切断しないと死んでしまうほど重症の
糖尿病の患者を手術しました。
彼は手術前に「この患者が少しでも努力していたら、
手術をせずに済んだのに」と思ったそうです。
その患者が健康管理や治療を怠ったと考えたのです。

しかしその後、努力ではどうにもならない問題が、
患者の病状を悪化させたと分かってきました。
アメリカでは糖が多すぎる食べ物が好まれ、
店でたくさん売られています。
普通に売っているものを食べているだけで、
糖尿病の前兆があらわれかねない状態だったのです。

手に入りづらい高価なものを食べて糖尿病を防ごうとしても、
お金や時間に余裕がなければ難しいです。
アティア医師自身、健康に気をつけていたのに、
後に糖尿病になりかけたといいます。

「知る・探す・汲む」で
先入観を乗り越える

今回は先入観について、ふたつのことが分かりました。

  • 先入観をもって人に接すると、先入観通りの反応を引き出してしまいます。
    自分の先入観を強め、相手との関係も悪くなりかねません。
  • 先入観は誰にでもあり、逃れることは難しいものです。
    医師でさえ「糖尿病の患者はなまけ者だ」と考えてしまいがちです。

先入観に振り回されずに、
よりよい職場環境を作るにはどうしたらよいでしょうか?

気持ちひとつで行動を変えられれば苦労しません。
仮にできても、急に大きく態度が変わったら
不自然かもしれないと思うと、尻込みしてしまいますね。

まずは“知る”ことです。
アティア医師が考えを改めたのは、
糖尿病とアメリカの食品事情の関係を知ったからでした。
「この人はどうせ○○だから」と思ったときに
「でも、それって本当だろうか?」と問い直せば、
先入観に気付けます。

情報が手に入らない場合は、先入観にそぐわない例外を
自分で“探す”のもよいでしょう。
短気な同僚は、話しているとき毎回絶対に怒るでしょうか?
見つけた例外的状況が起こったときに話すようにすれば、
短気な同僚を怒らせずに話せるかもしれません。

情報もなければ例外も見つからないという方は、
個々人の状況を“汲む”、つまりは想像してみましょう。
個人の事情に立ち入る必要はありません。
ただ「あの人にも何かしら事情があるのだろう」と捉えれば、
気持ちも少し楽になります。
自分の肩の力が抜ければ、
相手にも何か変化が起きるかもしれません。

「自分は○○だからできない」と思ってしまうのも、
自分から自分に対する予言の自己成就です。
接し方を変えて他人に嫌な思いをさせてしまわないか心配だという方は、
自分自身への先入観をなくすところから
始めてみてはいかがでしょうか。

2024年1月
文責: 林


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