相手の怒りに対処する【こころの休憩室 vol.46】

こんにちは。
皆様の心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。

今月は、自分自身のメンタルの健康を良好に保つためにも、
良好な人間関係を保つためにも重要な、
相手の怒りに対処する方法のお話をしたいと思います。

社会人として生活していると、
自分の感情をコントロールすることが求められがちですが、
かといって、すべての人が常に
自分の感情をコントロールできるわけではありません。

普段仕事をしている場面でもプライベートでも、
怒っている人と話す機会は起きるものです。

まずは自分を第一に。
相手の怒りに向き合う余裕はありますか?

そうは言っても、人が怒るような状況下では、
自分も少なからず動揺したり感情的になったりするものです。
他人の感情を受け止める余裕がないことも多々あります。

そんなときは、意識して落ち着くための時間をおきましょう。

具体的には
「明日、改めてこのお話をさせていただいてよろしいでしょうか」
「30分後に再度お話を聞かせてください」
と、
相手にはっきり伝えます。

時間は、自分が冷静さを取り戻すのにかかる時間が分かっていれば、
30分でなくても構いませんが、
怒っている相手にも冷静になってもらう時間が必要です。

大事なことは、相手が余計に怒り出しても、
ただ謝ったり、意味なく引き下がったりしないことです。

怒っている人は、すぐに自分の感情を
受け止めてもらえないことに不満をもつかもしれません。

そういった場合は
「ゆっくり話すために雑務を先に済ませたいので」とか
「状況を整理する時間がほしいので」
と言ってみましょう。

あくまでも相手の話を聞く意思はあることを伝えるのです。

待ってもらえれば、約束の時間までに双方とも気持ちを落ち着けることができます。

怒りの原因に心当たりがあるなら、その出来事を振り返ることもできます。
飲み物を飲んだり、ちょっとした用事を片付けたりしても構いません。

これからご紹介するステップを見直してもいいですね。

怒りと向き合う3つのステップ

さて、いよいよ、怒っている人と話さなければならなくなったとします。
このときは、3つの段階に沿って話をしましょう。

1. 怒りの原因になった
出来事や行動について、具体的に聞く。

誰が見ても分かることや、客観視できる具体的な「行動」に着目して話を聞きます。

反対に「あの人は怠けている」や「私のことをバカにしている」といった、
抽象的で漠然としたことは、あまり話の対象にしないことにします。

抽象的な話では捉え方の違いがありますし、
他人の心のなかのことについて対立すると、並行線で終わってしまいます。

2. 部分的にでも相手の言い分を認め、
それを相手に伝える。

怒っている人と対峙すると、
怒りをおさめようと事情を説明したくなったり、
怒りに怒りで対抗したくなったりします。

しかし、方法はそれだけではよくありません。
相手の怒りに同意や共感することも有効です。
同意や共感をされると、怒っている人は怒り続けることができなくなります。

認知療法を実践した医師のデビッド・D・バーンズは、
仕事柄、怒れる患者とよく対面しました。

患者のひとりから「あなたは私(患者自身)を思っていない」
と言われたバーンズは、それに同意します。
「この患者を治して、自分の治療の成功率を上げたい」
という思いは確かにあったからです。
同意すると患者は怒るのをやめ、むしろバーンズを庇ってくれたそうです。

このとき同意しなかったら、どうなっていたでしょう?
「いいえ、私はあなたのためを思って、最良だと考える治療をしています」と言われても、
患者の感情はおさまらなかったのではないでしょうか。

バーンズが同意したことで、患者は自分の感情が受け止められたと感じました。
さらに「あなたを治したい」と言われたので
「患者として思われている」と考えざるを得なくなったのです。

3. 自分の意見を具体的に伝える。

最後に、自分の意見があれば相手に伝えます。
このときのポイントは、話を聞いたときと同じく、
できるだけ具体的に話すことです。

抽象的なことや内心に関することは、誤解や推測の源になりやすく、
後で再びどちらかが怒りだしかねません。

I(アイ)メッセージを使うのも効果的です。
I(アイ)メッセージとは、「あなたは○○だ」ではなく
「私は○○だ」というように、「私」を主語にした伝え方のことです。

相手への強制力が弱まるので、相手の反発をやわらげながら、
自分の意志を伝えることができます。

まとめ

  • 怒っている人に対処するときは、自分が冷静でいることが大事です。
    • 動揺していたら無理はせず、思い切って時間をおくことを伝えましょう。
  • 怒っている人には具体的に事情を聞き、
    部分的にでも同意し、再び具体的に話しましょう。


ちょっとでも時間をおければ、自分の動揺も、相手の感情も落ち着く可能性があります。

しかし、いつでもそれができるとは限りません。
一度落ち着いた相手が、再びヒートアップすることもあります。
そんなときでも落ち着いて対処できれば、話がこじれることを避けられます。
ヒヤリとすることがあったとき、思い出していただければ幸いです。


  • 参考文献
    • デビッド・D・バーンズ著, 野村総一郎ほか訳『いやな気分よ、さようなら コンパクト版』, 星和書店, 2004年
    • スーザン・フォワード著, 亀井よし子訳『となりの脅迫者』, パンローリング, 2012年

2022年11月
文責: 大内、林

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