ぐずぐずの原因は「完璧主義」【こころの休憩室 vol.52】

こんにちは。4月という「区切り」の時期から一か月が経ち、
フレッシュな気分が落ち着いてきたころでしょうか。

仕事はもちろん、運動、早寝早起き、掃除、趣味などなど……。
心機一転の勢いで「やるぞ!」と決意したはずなのに、
いまだに手をつけられないことがあって、
モヤモヤしていませんか。

その原因は実は「やるからにはちゃんとしなければ」という気持ち、
言い換えれば「完璧主義」にあるかもしれません。

完璧主義の「完璧」ではない一面

「完璧主義」は、高い目標を目指して努力するとか、
熱心に取り組むという面で「よいこと」だとされています。

一方でぐずぐずしていると、
やる気がないとか怠けていると捉えられがちです。
これは「完璧主義」とは正反対のようです。

しかし、実は、ぐずぐずしてしまうことも
完璧主義の側面なのです。

「完璧」を重視しすぎると
「失敗」が許されなくなります。
すると、完璧にこなせないよりも
最初から手をつけない方が、失敗しないだけマシ
ということになるのです。

さらに
「今日は手をつけられなかったから、
明日こそちゃんとやろう」
などと思うと、理想が高くなって、
余計に「完璧」を実現しづらくなるのです。

完璧主義から脱する3つのアイデア

「完璧主義」から抜け出す考え方と、
それを身につける方法をご紹介します。

「完璧にできなくても満足できる」
「誰もがいつも完璧ではない」
「失敗から始めても前に進める」の3つです。

1. 「完璧度」だけでなく「満足度」も測る

何かを「どれだけ完璧にこなせたか」だけでなく
「自分がどれだけ満足したか」に注目してみましょう。
次の表のように、感じた気持ちの大きさを
数値化して比べると分かりやすくなります。

  • プレゼン本番を失敗なくこなした
    • 完璧度:95%。ミスはなく、みんな熱心に聞いてくれた。
    • 40%。みんな誰の話も熱心に聞くので、特別なことじゃない。
  • 親のスマートフォンのトラブルに対処
    • 60%。解決はしたが、状況を聞き出すのに苦労した。
    • 90%。感謝されたし、親の様子を知れてよかった。
  • 水泳の練習
    • 30%。今回も目標タイムを切れなかった。
    • 75%。改善点が分かった。次の練習が楽しみだ。

例えば「仕事をこなしたとき」は、
確かな成果を出したのに、それほど満足していない様子です。

一方で「親のスマートフォンのトラブルに対処」したときや
「水泳の練習」は満足度が高くなっています。
問題を解決できたが「苦労した」り、
目標を「達成できなかった」にもかかわらず、です。

私たちは、苦手なことは手早く片付け、
好きなことはめいっぱい楽しみたい、
それでこそ満足できると思いがちです。

しかし実際は「完璧でなくても満足できる」のです。

2. 身の回りにあるものにダメ出しする

「周囲の人はうまくやれている」と感じると
「自分も失敗しないようにしなければ」と思いがちですね。
そんなときは、本当に「自分以外は完璧」か確かめてみましょう。

身の回りにあるもので
「もっと○○ならよかったのに」と思うもの、
ダメ出しできるものは全く存在しないでしょうか?

部屋の暑さ寒さ、壁紙の色、周囲にいる人のことでも、
思うだけなら何でも構いません。

何か一つでもあれば
「自分以外はうまくやれている」
わけではないと分かります。

「誰もがいつも完璧ではない」なら、
自分自身も、完璧でないのが当たり前です。

3. 役に立たない計画を立てる

計画倒れしがちなときは、
計画の作り方を工夫してみます。

例えば、メールを書こうにも考えがまとまらないとき、
過去に送った別件のメールを
「これから書く内容の計画」として、下書きにします。

要件から違うわけですから、
そのままメールを送るわけにはいきません。

しかし明らかな間違いが目の前にあると
「そうじゃなくて、このメールで伝えたいのはこのことだ」
という方針が見えてきます。
白紙を前に「どう書こう」と悩むよりも
早く、先へと進めるのです。

「失敗から始めても前に進める」のですから
「完璧な計画」にこだわる必要はありません。
メールに限らず、まずは始めてみることです。

おわりに

最後に「失敗」のよい側面について、
付箋を最初に発明した3M社のエピソードがあります。

3M社ではもともと接着剤を作ろうとしていました。
その過程で生まれた粘着力の弱い「失敗作」が、
貼って剝がせるメモとい
う「成功例」を生み出すことになったのです。

3M社ほど見事な怪我の功名は珍しいでしょうが、
「完璧」にこだわると、成功や改善につながる「失敗」を
逃してしまうかもしれません。

「やるからにはちゃんとしなければ」と思っていて、
手をつけていないことがあれば、
ぜひ今からでも始めてみてください。

2023年5月
文責: 林

  • 参考文献
    • 野村総一郎ほか訳, 『いやな気分よ、さようなら コンパクト版』, 星和書店, 2013年
    • 読書猿,『問題解決大全』, フォレスト出版, 2017年
    • ポスト・イット® ブランドについて, https://www.post-it.jp/3M/ja_JP/post-it-jp/contact-us/about-us/, 3M, 2023年5月17日閲覧

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