“感謝の習慣”は心のビタミン【こころの休憩室】

カバー画像出典:写真AC
こんにちは。皆様の心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。
職場での人間関係を良くする秘訣は何でしょうか?
コミュニケーション能力、誠実さ、仕事のスキル……いろいろありますが、
意外と見落とされがちなのが 「感謝を伝えること」 です。
「そんなこと当たり前じゃない?」と思うかもしれません。
でも、実際には日々の業務に追われて、感謝をきちんと口に出す機会は少なくなりがちです。
「感謝の言葉なんて形だけ」と感じる人もいるかもしれません。
実は、感謝を伝えることには、科学的にも裏付けがあります。
今回は、感謝が職場にどんな良い影響をもたらすのか、
そして今日から始められる簡単な実践方法をご紹介します。
1. 感謝の3つの効果
1. 職場の「心理的安全性」の土台になる
心理的安全性とは「ここでは自分の意見を自由に言っても大丈夫」と思える状態のことです。
ハーバード大学のエドモンドソン教授は著書『恐れのない組織』などで、
心理的安全性はチームのパフォーマンス向上に欠かせないと述べています。
上司から「この前の資料、とても助かったよ。ありがとう」と言われるだけでも
「認められた」と感じ、自信を持って意見を言いやすくなります。
こうした小さなやりとりが、チームの雰囲気を大きく変えるきっかけになるのです。
2. チームの協力を引き出す
アメリカの心理学者エモンズとマカラによれば、
感謝された人はモチベーションが上がり、協力的になりやすいです。
さらに他の研究でも、上司や仲間から感謝を伝えられると
「助け合い行動」が増えることが実証されています。
脳科学の分野では、感謝を感じているときに
やる気や報酬処理に関わる脳の領域(前帯状皮質や内側前頭前野など)が
活性化することが報告されています。
感謝は”心理的ビタミン”のように働き、
ひと言伝えるだけで相手のやる気スイッチを押せる可能性があるのです。
3. 心の健康を守る
イギリスの心理学者ウッドらの2008年の研究では、感謝傾向が高い人ほど
時間がたっても気分の落ち込みが少なく、人からのサポートも得やすく、
対人関係の満足度も高いことがわかりました。
「ありがとう」を感じやすい人は、メンタルや人間関係で
長期的に良いサイクルが回りやすい、ということです。
また、ルーマニアを中心に行われた2015年の調査では、
感謝の度合いが高い人ほど、気分の落ち込みが少ないというはっきりした傾向が見つかりました。
さらに、日常で大切にしている考えや信仰を持っている人ほど、
この感謝のプラス効果が強く出やすいこともわかりました。
2. 今日からできる“感謝”の習慣
感謝を職場文化として根付かせるには、大げさなことをする必要はありません。
ポイントは「小さく・具体的に・すぐに伝える」ことです。
●すぐに伝える
仕事を手伝ってもらったら、その場で「助かりました、ありがとう!」と一言。
●具体的な行動とセットで
「昨日の打ち合わせ、フォローしてくれてありがとうございます。おかげでスムーズに進みました」
など、具体的な行動について感謝すると、相手は本当に評価されたと感じます。
●メールやチャットでも感謝を残す
文末に「お忙しい中、対応いただきありがとうございます」と添えるだけでも効果があります。
●チームで感謝を共有する時間をつくる
週1回、ミーティングの冒頭に「感謝タイム」を1分だけ設けて、全員が一言ずつ感謝を伝える。
3. 感謝を伝えるときの注意点
感謝は万能ですが、形だけになると逆効果です。
「とりあえず感謝すればいい」という態度は、相手に見抜かれます。
また、特定の人だけに感謝を集中させすぎると、周囲が不公平感を持つことも。
大事なのは、心からの気持ちを込めることと、
チーム全体にバランスよく感謝を伝えることです。
4. まとめ
感謝の習慣は職場の
「心理的安全性を高め」、
「チームの協力を引き出し」、
「心の健康を守る効果」があります。
これらを実感するためには、日常的に感謝の気持ちを表現することが重要です。
先月ご紹介した「肯定的な言葉」の実践法の中でも、
感謝はコストゼロで始められる、職場改善の強力なツールです。
今日から、あなたも職場で一つ「ありがとう」を増やしてみませんか?
その一言が、職場の雰囲気を変えるきっかけになるかもしれません。
2025年8月
文責:大内
- 参考文献
- Emmons, R.A. & McCullough, M.E. (2003). Counting Blessings Versus Burdens. JPSP.
- Grant, A. & Gino, F. (2010). A little thanks goes a long way: Explaining why gratitude expressions motivate prosocial behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 98(6), 946-955.
- Fox, G.R. et al. (2015). Neural correlates of gratitude. Frontiers in Psychology, 6, Article 1491.
- Wood, A. M., Maltby, J., Gillett, R., Linley, P. A., & Joseph, S. (2008). The role of gratitude in the development of social support, stress, and depression: Two longitudinal studies. Journal of Research in Personality, 42(4), 854–871.
- Tulbure, B.T. (2015). Appreciating the Positive Protects us from Negative Emotions: The Relationship between gratitude, Depression and Religiosity.