間違いを認める勇気【こころの休憩室】

カバー画像出典:写真AC
こんにちは。皆様の心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。
職場では、多かれ少なかれミスや誤解は誰にでも起こります。
ところが、そのときにどう対応するかで、周囲の印象や信頼度は大きく変わってしまいます。
「自分は悪くない」と強く主張し、決して謝ろうとしない人。
指摘されても言い訳を並べて、責任を回避しようとする人。
一見すると堂々として正論を述べているようにも見えるかもしれません。
しかし、そのような態度こそが人間関係を悪化させ、
本人の成長やキャリアをも妨げる原因になりかねません。
そうならないために、今回は「間違いを認めることの力(強さ)」について考えてみたいと思います。
1. 【信頼関係】間違いを「認めない」→信頼低下/「認める」→信頼向上
間違いを認めない人は、「責任逃れをしている」「誠実さに欠ける」と受け止められがちです。
その結果、職場での信頼を失いやすくなります。
ウィツキ&ポリン(2012)の研究では、曖昧な謝罪よりも
「責任を明確に認める謝罪」の方が信頼を強く回復させることを示しました。
つまり、自分の非を曖昧にしたり言い訳したりする態度は、信頼をむしろ損なうリスクが高くなります。
一方で、「自分のミスでした」と素直に認める人は、
「誠実で信頼できる人」と評価されます。
職場での不正や失敗に対して謝罪することが、同僚や上司からの信頼回復につながり、
さらに協力意欲を高めることが確認されています。
たとえば会議で自分の提案に誤りがあったとき、
「ここは私の見落としでした」と一言添えるだけで、場の空気は和み、信頼が増していくのです。
信頼があるからこそ、自然に助け合いが生まれ、仕事も円滑に進みます。
2. 【成長機会】間違いを「認めない」→学びが止まる/「認める」→成長が加速する
間違いを認めない人は、自分の行動を振り返る機会を失います。
そのため同じミスを繰り返しやすく、成長のスピードは遅くなります。
スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱する
「成長マインドセット」の研究では、
失敗から学べる人ほど成長が早いことが示されています。
間違いを“自分の能力不足の証拠”と捉えるか、
“次に活かすためのフィードバック”と捉えるかで、
その後の伸びが大きく変わるのです。
たとえば、資料作成で誤字や計算ミスを指摘されたとき、
「忙しかったから仕方ない」と言い訳する人は改善が進みません。
しかし「次回はチェックの工程を増やそう」と受け止める人は、
同じ過ちを防ぎ、確実にスキルアップしていきます。
3. 【人間関係】間違いを「認めない」→摩擦が増える/「認める」→信頼と協力が生まれる
間違いを認めない人がいると、同僚は「責任を押し付けられた」と感じ、不満が募ります。
これが積み重なると、チーム全体の雰囲気はぎくしゃくし、協力体制が崩れてしまいます。
逆に、「私のせいだったかもしれません」と一歩引いて認められる人がいると、
場の緊張が和らぎ、建設的な会話が生まれます。
ときには相手の信頼をさらに深めるきっかけになることもあります。
人間関係において大切なのは、「誰が正しいか」ではなく「どうすれば前に進めるか」です。
誠実に間違いを認める姿勢は、相手の心を開き、協力関係を築くための土台となります。
4. 【評価】間違いを「認めない」→評価が下がる/「認める」→評価が上がり信頼される人材に
立場を問わず、間違いを認めない態度は
「この人には本音を言えない」と思わせ、
周囲の人が自分の失敗を隠すようになります。
Googleが行った社内調査研究「プロジェクト・アリストテレス」では、
チームの成功に最も影響する要素は「心理的安全性」であると結論づけられました。
つまり、立場を問わず誰もが安心して意見や懸念を言える環境が成果につながるのです。
「自分の非を認められる人」は、その安全な空気をつくる存在になります。
結果として、同僚や上司からも「信頼できる人」「安心して任せられる人」とプラスに評価されます。
●間違いを認めることは“弱さ”ではなく“強さ”
「間違いを認めると無能だと思われるのでは」と不安に感じる人もいると思います。
むしろ、自分の非を認め前向きに対処できる人こそ、
「信頼できる」「一緒に働きたい」と周囲から評価されます。
間違いを素直に認めることは“弱さ”ではなく、柔軟性や誠実さ、成長意欲を示す“強さ”といえます。
●まとめ
誰にでも間違いはあります。その後、どう向き合うかの選択です。
- 信頼を失うか ↔ 信頼を深めるか
- 成長を止めるか ↔ 成長を加速させるか
- 人間関係を悪化させるか ↔ 協力関係を築くか
- 評価を下げるか ↔ 評価を上げるか
間違いを素直に認めることは、自身の成長につながるだけでなく、
職場全体をより良い方向へ導く重要な一歩です。
前向きな変化を生み出すためにも、“間違いを認める勇気”を持つことをお勧めします。
2025年9月
文責:大内
- 参考文献
- キャロル・ドゥエック著, 今西康子訳『マインドセット 「やればできる!」の研究』, 草思社, 2016年
- Roy J. Lewicki, Beth Polin, The Art of the Apology: The Structure and Effectiveness of Apologies in Trust Repair, Restoring Trust in Organizations and Leaders: Enduring Challenges and Emerging Answers, 2012
- Fengling Ma et al., Apologies Repair Trust via Perceived Trustworthiness and Negative Emotions, Frontiers in Psychology, 2019