心のケア入門:メンタルヘルス・ファーストエイド【こころの休憩室 vol.62】
皆さん、こんにちは。
皆さんの心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。
新しい年度が始まり、わくわくする変化がある一方で、
時にはそれがストレスになることもありますよね。
身の回りにいる人が元気をなくしているとき、どう声をかければいいか、迷うことはありませんか?
今回はそんな時に役立つ「メンタルヘルス・ファーストエイド」についてご紹介します。
メンタルヘルス・ファーストエイドとは、オーストラリアで生まれた、
こころの不調を持つ人への応急処置(サポート)のことです。
「応急処置」の前にできること
不調を抱えていそうな人に声をかける前に、重要な準備があります。
身近な専門家や相談窓口へのアクセスを確認しておくことです。
不調の症状が重かったり、悩みが手に負えなかったりするときは、専門家の助けが必要です。
助けようとしたあなた自身が辛い思いを抱えることもあるでしょう。
そんなときも相談先があれば安心ですね。
メンタルヘルス・ファーストエイドの5つのステップ
こころの不調は本人が自覚していなかったり、
自覚はあっても誰にも相談していないことが多いものです。
最初に気付けるのは周囲にいる人ですが、からだの病気のようには
症状が見えないこともあり、どのように手助けをすればよいか戸惑うことも多いでしょう。
メンタルヘルス・ファーストエイドは
こころの不調を抱えた人を専門家につなぐために、
周囲の人がどのように相談に乗ればよいかを教えてくれるのです。
「りはあさる」して相談に乗る
メンタルヘルス・ファーストエイドは専門家ではない人のための手法です。
その手法は「りはあさる」という簡単な5つのステップにまとめられます。
いま身近に心配な人がいる、声をかけられなかった思い出があるという方は、
5つのステップを読みながら相談に乗る“リハーサル“(練習)をしてみてください。
- リスクを評価する(安全を確認する)
- 様子が変わって心配していることを伝え、緊急性の度合いを測ります。
相手が自分自身や他人を傷つけてしまわないかを見極めましょう。
- 様子が変わって心配していることを伝え、緊急性の度合いを測ります。
- はんだん(判断)せずに話を聞く
- 「判断せずに」というのが難しいところです。
本人を責めたり、解決策を押し付けたりせず、ただ聞くことが重要です。 - 相手の話を聞く姿勢を崩さないことを心がけましょう。
沈黙を恐れず、あいづちは最小限でも構いません。
「辛かったね」と共感を示すのがポイントです。 - 相手の話を聞いたら「話してくれてありがとう」と労いの言葉をかけましょう。
- 「判断せずに」というのが難しいところです。
- あんしん(安心)感を与える
- 「自分の弱さや性格のせいではなく、適切な対処や治療で良くなる可能性があるよ」と伝えます。
- 体の問題が心に影響することもあると理解させることも効果的です。
- サポートを得るよう勧める
- 相手の状態にあわせた専門家への相談を勧めます。
- 本人の代わりに相談先へ予約をすることも助けになります。
こころが弱ると、ちょっとした手続きをする気力もなくなるものです。
本人が「相談したい」と望んだら、ぜひ手助けを申し出てみてください。
- セルフヘルプを勧める
- リラックスする方法や生活習慣の改善など、自分でできる対処法を一緒に考えます。
- 身近な人への相談のしかたを一緒に考えたり、
自助グループへの参加を勧めてみたりしてもよいかもしれません。
「りはあさる」に従ってサポートを終えたら終わり……ではありません。
不調を抱えた本人にとっては、相談してからが本番です。
判断せずに話を聞いたときのように、静かに、それでいて温かい見守りを続けましょう。
不調を抱える人へのサポートは、あなた自身にとっても大切な経験になります。
この機会に、メンタルヘルス・ファーストエイドの知識を身につけて、
周りの人とともに健やかな毎日を過ごしましょう。
- 参考文献
- 高橋和巳,『精神科医が教える聴く技術』, 筑摩書房, 2019年
- 政府広報オンライン, あなたもゲートキーパーに!大切な人の悩みに気づく、支える(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201402/2.html), 内閣府大臣官房政府広報室, 2024年3月14日閲覧