安心を支える仕事術【こころの休憩室】

カバー画像出典:写真AC

こんにちは。皆様の心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。

現代の職場は、業務のスピード化や作業量の増加により「うっかりミス」や「確認漏れ」が起きやすくなっています。
ミスに気づいたときの「しまった!」という瞬間は、誰しも経験したくないものです。緊張や自己嫌悪はストレスとして積み重なり、メンタルヘルスにも影響を与えかねません。

このような負担を軽減し、安心して業務を進めるための有効な手段が「チェックリスト」です。
手軽に始められる一方で、ミスを未然に防ぎ、心の余裕も生み出す力があります。

とはいえ、せっかく作ったチェックリストも「面倒」「時間がかかる」といった理由で使われなくなってしまうこともあります。
なぜ定着しないのか、どうすれば活用し続けられるのか――今回は、チェックリストの効果的な活用法と、その工夫のポイントをご紹介します。

チェックリストは「安心して進む」ための杖

「ミスを防ぎたい」と思うと、確認事項をすべて盛り込んだチェックリストを作りたくなります。
ですが、項目が多く時間がかかるチェックリストは、現場では使われなくなってしまいがちです。
チェックリストをうまく活用している現場では、どうしているのでしょうか。

たとえばパイロットや医師・看護師といった職業では、“基本的な確認作業“をチェックリストに任せています。
これによって、注意力や判断力を本当に重要な場面に使っているのです。

チェックリストは「確認して終わる」ためではなく「安心して次に進む」ために作りましょう。

“チェックリスト”のためのチェックリスト

では、どこに気をつければ良いチェックリストが作れるのでしょうか。
世界の病院で使える「WHO手術安全チェックリスト」の作成に携わったアトゥール・ガワンデは、“チェックリスト“がよいものになっているか確認するためのチェックリストを作りました。

  • 使うタイミングがはっきりしている。
    作業の前、途中、終了後など、確認のための「一時停止点」を明確にする。
  • 確認する項目の数は、多くても9項目以内にする。
  • 60秒以内にチェックできる構成にする。
  • 内容はシンプルかつ具体的にする。
    例えば「窓をちゃんと確認」ではなく「窓が閉まっていることを確認する」と書く。
  • 声に出してチェックできる。複数人いるときは、全員がチェックしたことを確かめ合う。
  • 作成日か更新日が記録されている。

指さし呼称――目で見て、指でさし、声に出す

「声に出して確認する」ことも非常に重要です。
さらに指さしを加えると効果的です。
航空業や運輸業、建設業、製造業等で使われる「指さし呼称」は、脳の前頭葉の活動が活発になるといわれています。

指さし呼称の手順

  1. チェック対象をしっかり見る。
  2. 呼称する項目を声に出しながら腕をまっすぐ伸ばし、人さし指で指差す。
  3. さした手を耳元まで戻しながら「本当に正しいか」確かめる。
  4. 確認できたら「ヨシっ!」と発声し、対象に向かって手を振り下ろす。

「大げさで気恥ずかしい」「オフィスが静かで声を出しづらい」などのご事情もあるでしょうが、集中力が落ちているときや注意散漫なときだけでも取り入れることで、ミスを減らせることでしょう。

ダブルチェックの落とし穴――本当に確認できていますか?

確認ミスが起きたとき、対策としてダブルチェックを行うことがあります。
ひとりだと見落としてしまうことでも、ふたりなら見逃さないだろう……というわけです。

しかし、ダブルチェックにも落とし穴があります。
それは社会的手抜きです。
互いが「自分以外も確認から大丈夫だろう」と自然と油断し、結局ミスが見逃されてしまうのです。
ダブルチェックは有効な場面を選んで使いましょう。

ダブルチェックが有効な場面

  • 複雑で、注意が必要な作業である。
  • 2人が独立してチェックできる体制である。
  • ひとりがチェックを終えたら、もうひとりがすぐダブルチェックできる。

簡単な作業や単純な確認事項では、むしろ1人で集中して確認した方が確実な場合も多いのです。

おわりに――チェックリストは使って育てる

どれだけ工夫しても、ミスが完全になくなるわけではありません。
チェックリストを作るのも、チェックをするのも人間だからです。
それでも、あきらめずに使い続け、少しずつ改善していくことで、チェックリストはより実用的で信頼できるものに育っていきます。

安心して仕事を進めるために、荒削りでも、自分だけの「転ばぬ先の杖」を作ってみてください。

2025年6月
文責:林


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA