健康・医療情報を「活用」する【こころの休憩室 vol.38】
みなさん、こんにちは。
働く皆さまの心と身体の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。
「コロナ禍から始めるヘルスリテラシー」と題して、
健康や医療に関する情報を有効活用する方法についてお伝えしています。
ヘルスリテラシーの構成要素である、
情報の「入手」「理解」「評価」について
各1回ずつお届けしてきました。
今回は、情報の「活用」です。
評価した情報を「活用」するため、
自分が何をするかを決定しましょう。
情報を「活用」するには
どの病院でどんな治療を受けるか、
サプリメントを買うかどうか、
朝のジョギングを始めるかどうか……。
私たちが何かを決める時に頼りになるのは情報です。
何かに迷ったとき、
私たちは情報を入手し→理解し→評価し、
そして最終的に行動を選択します。
つまり、「選ぶ」ことで初めて情報の「活用」につながります。
実際には、100%確かな情報が存在しない時点で
「する・しない」を選ばなければならないケースも少なくありません。
不安定な足場から
別の足場にジャンプして飛びのるようなもので、
なかなか踏ん切りがつかない方も
多いのではないでしょうか。
そんなときに、簡単に使える「功罪表」というツールがあります。
アメリカの政治家であり物理学者で、
100ドル紙幣の肖像にもなった
ベンジャミン・フランクリンが発明した方法です。
私たちが選択を必要とする場面で、
日常的にも使える方法なので、ぜひ一度お試しください。
<フランクリンの功罪表>
- 決めたいことを紙に書きます。
- 紙に縦線を一本引きます。
- 線の左右に、メリットとデメリットを
思いつく限り書きますます。 - それぞれの要因を5段階評価します。
重要な要因に大きな数字をつけます。 - メリットとデメリットを比べて、
評価の数字を相殺できるもの同士を打ち消します。 - 左右に残った理由をもとに、
最終的な選択をします。
例「ジョギングを始めるかどうか?」
メリット(利点) | デメリット(欠点) |
・体力がつく 2 ・ ・東京マラソンにでる 1 ・食事がおいしい 1 | ・ ・疲れる 2 ・ |
▲メリットの「体重が減る」の評価は4なので、
デメリットの評価2の理由2つ「睡眠時間が減る」「お金がかかる」で打ち消せる。
残った反対理由は「疲れる」だが、「体力がつく」なら疲れも減るかもしれない。
ジョギングをすると決めた。
健康≠怪我や病気がないこと
WHO憲章では「健康」が次のように定義されています。
「健康とは、
病気でないとか、弱っていないということではなく、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、
すべてが満たされた状態にあること」
この定義なら、病気や心身の不自由があっても、
自分のしたいことを自分でかなえられるなら
「健康」だと言えそうです。
これは「幸福」や「ウェルビーイング(Well-being)」とも言い換えられます。
80歳でエベレストに登頂した三浦雄一郎さんがいらっしゃいます。
エベレスト登山による負担を思えば、彼の挑戦は、
狭義の「健康」から遠ざかる行動かもしれません。
しかし、WHO憲章でいう「健康」を基準にするとどうでしょう。
無謀なものであっても、
肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも
満たされた状態を目指すからこそ、
彼は登山に必要なだけの体力を
もちつづける努力ができたとも考えられます。
自分の生きがいを含めた「ウェルビーイング」を大事にすることが、
結果的に体の健康を保つ原動力になることもあるのです。
ヘルスリテラシーを高めることで訪れる未来
「日常生活に何らかの制限がない期間」を健康寿命といいます。
日本人の実際の寿命と、健康寿命の差は8年から12年。
健康上の理由で何らかの制限とともに過ごす期間がそれだけあるのです。
健康や医療に関する情報を活かす力、
つまりはヘルスリテラシーを高めていれば、
健康でいられる時間は長くなるでしょう。
仮に不自由な部分がでてきたとしても、
「ウェルビーイング」な人生を選びとるために、
ヘルスリテラシーの知識がきっと役に立つはずです。
まとめ
- 「フランクリンの功罪表」などのツールを日常で活用してみましょう。
- 体の不調を気にするだけでなく、生きがいをもつことも健康に生きる秘訣です。
- 満足な人生を送るために、ヘルスリテラシーを活用しましょう。
今回で「コロナ禍からはじめるヘルスリテラシー」は一区切りとなります。
感染拡大の第6波はピークを越え、3回目のワクチン接種も進んでいます。
しかし、感染症に「一区切り」はなさそうです。
今後の皆様の生活に、一連の内容が少しでも役立てば幸いです。
参考文献
- 読書猿, 問題解決大全, フォレスト出版, 2017年.
- 福田洋・江口泰正, ヘルスリテラシー 健康教育の新しいキーワード, 大修館書店, 2016年.
- 佐藤敏彦, 平均寿命と健康寿命, https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-002.html, e-ヘルスネット(厚生労働省), 2022年3月16日閲覧
2022年3月
文責: 大内・林