みんなで間違えないためにできること【こころの休憩室】

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こんにちは。皆様の心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。

今回は企業のような「集団」で起こる問題を取り上げます。
「みんなが同じ方向を向く」からこそ起きる「集団思考」は、
ほんの数人の集まりでも起こるような、ありふれた厄介な問題です。

「集団思考」に陥りやすい集団の特徴や、対抗するための方法もご紹介いたします。

みんなで決めたのにみんな望んでいない――集団思考とは?

「集団思考」の具体例と言える「アビリーンのパラドックス」をご存じでしょうか。
本当は誰も望んでいないことに、なぜか誰も反対しない現象についてのお話です。

猛暑の日、アメリカのある町のできごとです。
夫婦と夫の両親が団欒していると、夫の父親が
「アビリーンの町まで行って夕食にしよう」と提案しました。
誰も反対しませんでしたが、アビリーンの町までは80kmあります。
暑さもあり、帰って来る頃には皆が疲れ果てていました。

帰宅後、全員が口々に「本当は気乗りしなかったが、他の人が行きたそうだったから行った」といいました。
提案した夫の父親さえ「みんなが退屈した様子だったから誘った」というのでした。

人が集まって何かを決めるとき、こういったことよく起こりますね。
家族はもちろん、企業のような大きな集団でも同じです。

集団が大きいほど、こうした判断の誤りは悪影響を及ぼし、
多くのメンバーが不満や苦痛を感じるでしょう。
そのため「集団思考」を防ぐことは非常に重要です。

集団思考を招く3つの要因

水を差したくないからと、自分の意見を引っ込めてしまったことはありませんか。
せっかく話が進んだのだからと、異論を聞かなかったふりをしたことはありませんか。
これらは集団思考の兆候です。

集団思考が起こりやすい集団には特徴があります。
多様な意見が排除され、誤った判断が訂正されにくい集団であることです。
より具体的に見ていきましょう。

  1. 指示的なリーダーが明確な意見をもつ集団である。
    メンバーがリーダーに反対しにくくなります。
  2. 結束力が高い集団である。
    集団の和を保つことが重視され、適切な意思決定がされづらくなります。
  3. 外部の手段や、他の意見を得る方法がない。
    集団内の見解が偏っていても、修正されづらくなります。

こうして見ると、企業は集団思考が起こりやすい構造だといえます。
リーダーの指示のもと、企業の利益を増やすため、結束して人々が働くからです。
守秘義務などがあって外部の意見を得づらいことも、異論が生まれづらい土壌になっています。

集団思考を防ぐしくみ

異論が許されない空気から集団思考は生まれます。
つまり、集団思考を起こしづらくするには、異論や反論があればそれを口に出すことが必要です。

問題はこれが簡単ではないことです。言い争いになって「和を乱す人」と思われるより、
周りを慮って異論を口にしない方がいいように思えてしまいます。

そこで考えられるのは、集団として、異論を受け入れやすいしくみを作ることです。

外部の目線を取り入れるしくみ

一番は他部署の人や休み明けの人、新しく入社した人など、
事情に詳しくない人に会議や話し合いに加わってもらうことです。
これは「外部の意見」そのものです。
「何も知らない人」として意見を求められていると分かっていれば、
何も知らない人も、意見を出しやすいかもしれません。

都合のよい外部の目がなければ、「悪魔の代理人」を任命しましょう
「悪魔の代理人」とは、異論を述べる役目の人です。
元はカトリック教会で奇跡を否定する役目を請け負う人をいいます。
悪魔の代理人が否定しきれなかったできごとだけが、本物の奇跡として認められるそうです。

「悪魔の代理人」として異論を述べれば「和を乱す人」だと思われにくくなります。
ただし、あまのじゃくに徹しすぎてもよくありません。「本物の奇跡」を認める余地は残してください。

リーダーの意思表示を調節するしくみ

リーダーの意見にメンバーは異論を差し挟みづらいものです。
とはいえ、リーダーの意見が全くなければ、集団はうまく機能しないでしょう。
集団思考を防ぐなら、リーダーは意見をもちながら、
それを表明するタイミングを見計らわなければなりません。

メンバー全員が意見を述べるまで自分の立場を表明しないようにすれば、
メンバーが迎合しづらくなります。
しかしこれは思っている以上に難しいことです。
自分では同じように反応しているつもりでも、
自分に賛同する意見と反対する意見では、微妙にリアクションが違うかもしれません。

もっと簡単に同じ効果を得る方法があります。
議論のとき一時的に席を外すことです。
リーダーがその場にいなければ、メンバーは自由に話しやすくなります。

集団で何かを決めるとき、表面上意見が一致しているときにこそ起こり得る「集団思考」。
それに対抗するには、集団のメンバーが異論を表明できる環境が必要です。
「しくみで対処」と述べましたが、個人で始められそうなものに絞ってご紹介しました。
是非お試しいただければ幸いです。

2024年11月 文責:林


  • 参考文献
    • 戸田山和久,『思考の教室 じょうずに考えるレッスン』, NHK出版, 2020年

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