「こうなったらいいな」から始まる小さな一歩【こころの休憩室】

カバー画像出典:写真AC

こんにちは。皆様の心身の健康をサポートする「えがおパートナーズ」です。

新年度が始まりました。
新入社員の姿を見て、自分の理想や目標を思い出した方も多いことでしょう。
理想は前向きな力になりますが、
現実とのギャップが大きいと、かえってストレスになってしまいます。

そこで今回は、理想を上手に活用できる「ミラクル・クエスチョン」に答えてみましょう。

1.  ミラクル・クエスチョン――もしも奇跡が起きたなら

少しでも「こうなったらいいな」と感じていることはありますか。
それを思い浮かべて、「ミラクル・クエスチョン」に答えてみてください。

寝ている間に奇跡が起きて、『こうなったらいいな』と思ったことが実現したとします。
翌朝、あなたはいつ、どんな瞬間に『奇跡が起きた』と気づくでしょうか?

「そんな夢みたいなことが起きるわけない」とお思いかもしれませんが、
「こうだったらいいな」程度の感覚で構いません。
いくつか例を挙げますが、できる限り事細かに想像してみてください。

  • 夜更かし癖が抜けず、朝起きるのがつらい。もっとすっきり目覚めたい。
    (奇跡が起きた)目覚ましが鳴る前に自然と目が開く。
    カーテンの隙間から朝日が差し込んでいて「今日は体が重くない」とすぐ気づく。
    二度寝する気にもならず、そのままベッドを出る。
  • 仕事が山積みで、どこから手をつければいいか分からない。優先順位が分かればいいのに!
    (奇跡が起きた)出社してTodoリストを見るとすでに優先順位が書き込まれている。
    何をすればいいかが分かって仕事が捗る。時間に余裕ができ、新しいタスクにも優先順位をつけられた。
  • ひとりで仕事を抱え込んでしまう。人に頼った方がいいとは思っているけれど……。
    (奇跡が起きた)同僚から「何か手伝うことある?」と
    声をかけられたとき、自然と「これお願いできる?」と頼めた。
    心の中で「こんなふうに頼ってもいいんだ」とほっとした。

2.  1/100でも「できること」を探す

イメージできたでしょうか? できたら次は、
思い描いた理想の中で、部分的にでも実現できそうなことを探してみてください
先ほど挙げた3つの例をもとに、ごく小さなステップを考えてみました。

  • 夜更かし癖が抜けず、朝起きるのがつらい。もっとすっきり目覚めたい。
    朝日が差し込むよう、カーテンを少し開けておく。
  • 仕事が山積みで、どこから手をつければいいか分からない。優先順位が分かればいいのに!
    退勤前に、明日やることを3つだけでも書き出す。
  • ひとりで仕事を抱え込んでしまう。人に頼った方がいいとは思っているけれど……。
    実際に頼らなくても、声をかけてくれる人の得意分野や、頼めそうなことを想像する。

3.  できそうなことから少しずつ挑戦する

「これくらいならできそう」と思えることを、実際にやってみてください。
うまくいったことは少しずつ理想に近づけていきます。
うまくいかなくても落ち込むことはありません。
もっと簡単に達成できるようにステップを細かくするか、
他にできそうなことはないか探せばいいのです。

理想の状況を具体的に想像して、どんな小さなことでも、できそうなことをやってみる
これが「ミラクル・クエスチョン」です。

解決志向短期療法

ミラクル・クエスチョンは、解決志向短期療法という心理療法で使われる技法のひとつです。

私たちはうまくいかないことがあると
「どうしてうまくいかないんだろう?」と原因を探してしまいがちです。

ですが、なぜうまくいかないのかはっきりしないこともあれば、
うまくいかない原因を取り除けないこともありますよね。

解決志向短期療法は「どうすれば少しでも前に進めるか?」に注目することで、
原因の分からない問題、原因を取り除けない問題にも、前向きに対処できるのです。

奇跡も魔法もないからこそ

ただし、理想を思い描き、行動しても「理想がそのまま実現する」わけではありません。
それどころか、理想が最善ではなかったと分かることもあります。
そんなときはどうすればいいでしょうか?

ある製薬会社の事例――作業員に安全眼鏡をかけさせるには?

ある製薬会社の工場では、作業員が安全眼鏡を着けてくれないことが問題になっていました。
ポスター掲示や研修も効果がなかったので、
会社の幹部たちは「理想の状態」がどんなものかを考えました。
作業員全員が安全眼鏡をかけて働く姿を想像してみたのです。

すると意外な意見が出ました。「見た目が野暮ったい」というのです。

そこで幹部たちは「今の安全眼鏡にこだわらず、
眼鏡の類をかけさせるにはどうしたらいいか?
」を課題にしました。
作業員の意見も取り入れて見た目のいい安全眼鏡を開発すると、
安全眼鏡の着用率はぐんと上がりました。

この事例は「理想はスタートであってゴールではない」ことを教えてくれます。
幹部が「野暮ったくても、今ある安全眼鏡をかけてもらわなくては困る」と考えていれば、
うまくいかなかったでしょう。

ミラクル・クエスチョンは理想と現実の橋渡しとなってくれます。
諦めてしまったことがある方も、よければ「もしも奇跡が起きたら」と想像してみてください。
きっと、できることが見つかります。

2025年4月
文責:林


  • 参考文献
    • 読書猿, 『問題解決大全』, フォレスト出版, 2017年

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